作業手順書を作りたいとき、AIに「この業務の手順書を作って」と頼めば、文章のたたき台はすぐ出てきます。
ただし、元になる情報があいまいなままだと、できあがる手順書もあいまいになります。実際の例外、担当者の判断、使っている画面、確認タイミングが抜けると、現場では使いにくい資料になりがちです。
AIに任せる前に必要なのは、きれいなプロンプトよりも「材料集め」です。
この記事では、低リスクな業務改善として、AIに作業手順書を作らせる前に集めておきたい5つの材料を整理します。
先に集める5つの材料
作業手順書の下書きをAIに作らせる前に、次の5つをそろえます。
| 材料 | 目的 | 例 |
|---|---|---|
| 作業の開始条件 | いつ手順を始めるかを明確にする | 依頼メールを受け取ったら、月末になったら |
| 完了条件 | どこまでやれば終わりかを決める | 台帳に記録し、担当者へ連絡したら完了 |
| 入力情報 | 作業に必要な情報を漏らさない | 顧客名、日付、依頼内容、管理番号 |
| 確認ポイント | ミスが起きやすい箇所を先に見る | 金額、期限、宛先、添付ファイル |
| 例外パターン | 自動化しすぎを防ぐ | 情報不足、期限超過、担当不明、判断が必要なケース |
この5つがあると、AIは単に文章を整えるだけでなく、現場の流れに沿った手順書のたたき台を作りやすくなります。
材料1: 作業の開始条件
最初に決めるのは「いつこの手順を始めるのか」です。
開始条件があいまいだと、手順書を読んだ人が「これは今やる作業なのか」「誰かが先に確認するのか」で迷います。
たとえば、次のように書きます。
開始条件:
- 問い合わせフォームから見積依頼が届いた
- 件名に「見積」「相談」「依頼」のいずれかが含まれる
- 既存顧客か新規顧客かはまだ確定していない
開始条件は、作業の入口です。ここがそろうと、AIに「この条件から始まる手順書にして」と渡せます。
材料2: 完了条件
次に、作業の終わりを決めます。
手順書でよく起きる失敗は、作業の途中までは詳しいのに、最後に何を確認すれば完了なのかが書かれていないことです。
完了条件は、できるだけ確認できる形にします。
完了条件:
- 必要項目を台帳に登録した
- 担当者を1人決めた
- 顧客へ一次返信を送った
- 次回確認日をカレンダーに入れた
「対応する」「確認する」だけではなく、記録、連絡、次回アクションまで入れると、手順書が運用に乗りやすくなります。
材料3: 入力情報
AIに手順書を作らせる前に、作業で使う入力情報を一覧にします。
入力情報とは、作業者が最初に見るもの、転記するもの、判断に使うものです。
たとえば、問い合わせ対応なら次のような項目です。
入力情報:
- 受付日時
- 問い合わせ種別
- 顧客区分
- 依頼内容
- 希望期限
- 既存の管理番号
- 添付ファイルの有無
ここで注意したいのは、AIに渡す必要がない情報まで入れないことです。個人情報、契約条件、社外秘の画面キャプチャなどは、扱いを分けます。
手順書作成に必要なのは、実名や詳細な取引情報ではなく、作業の流れを説明できる粒度の情報です。
材料4: 確認ポイント
手順書には、ミスが起きやすい確認ポイントを入れます。
AIが作る文章は、流れはきれいでも「どこで止まるべきか」が弱くなることがあります。そのため、人間が確認すべきポイントを先に渡します。
確認ポイントは、次のように書きます。
| 確認ポイント | なぜ見るか | 人間確認が必要な例 |
|---|---|---|
| 金額 | 誤請求を防ぐ | 前回と大きく違う |
| 宛先 | 誤送信を防ぐ | 複数担当者がいる |
| 期限 | 対応漏れを防ぐ | 期限が当日または過ぎている |
| 添付ファイル | 情報不足を防ぐ | 添付ありと書かれているがファイルがない |
確認ポイントを渡すと、AIに「この箇所では必ず人間確認を入れる」と指示できます。
材料5: 例外パターン
手順書で一番大事なのは、通常パターンより例外パターンです。
通常パターンだけなら、AIはそれらしい手順を作れます。しかし、実務で手戻りが起きるのは、情報不足、担当不明、期限超過、判断が割れるケースです。
最初は、例外を細かく分類しすぎなくてかまいません。
例外パターン:
- 必須情報が足りない
- 担当者が決まっていない
- 期限が短すぎる
- 金額や契約条件に関わる
- クレームやトラブルの可能性がある
- 社外秘や個人情報が含まれる
この一覧があるだけで、AIに「通常手順」と「人間確認に回す条件」を分けて書かせやすくなります。
AIに渡す前のテンプレート
材料集めは、次のテンプレートで十分です。
作業名:
-
開始条件:
-
完了条件:
-
入力情報:
-
確認ポイント:
-
例外パターン:
-
AIに渡さない情報:
-
人間確認が必要な条件:
-
ポイントは、最初から完璧に書かないことです。1つの作業について、現場の人に10分だけ聞いて埋めるくらいで始めます。
AIへの依頼文の例
材料がそろったら、AIには次のように依頼します。
以下の材料をもとに、作業手順書のたたき台を作ってください。
条件:
- 初めて担当する人でも分かる順番にする
- 通常手順と例外対応を分ける
- 人間確認が必要な箇所を明記する
- 個人情報や社外秘は本文に含めない
- 最後に完了チェックリストを付ける
AIにいきなり完成版を書かせるのではなく、「たたき台」として作らせます。その後、現場の担当者が抜けや違和感を直します。
向いている作業、向いていない作業
この方法が向いているのは、次のような作業です。
- 毎週または毎月くり返す作業
- 担当者によってやり方が少し違う作業
- 新人や別担当へ引き継ぎたい作業
- 確認漏れが起きやすい作業
- 例外対応を整理したい作業
一方で、次の作業は自動で手順書化しないほうが安全です。
- 法的判断や契約判断が中心の作業
- 医療、健康、金融など専門的判断が必要な作業
- 個人情報や機密情報を多く含む作業
- 担当者の裁量が大きく、標準化がまだ難しい作業
- 誰も内容を確認できない作業
向いていない作業では、AIに完成版を作らせるのではなく、まず「確認すべき項目リスト」だけ作るほうが安全です。
まとめ
AIで作業手順書を作るときは、プロンプトを工夫する前に材料をそろえます。
最低限集めたいのは、次の5つです。
- 作業の開始条件
- 作業の完了条件
- 入力情報
- 確認ポイント
- 例外パターン
この5つがあると、AIは文章をそれらしく整えるだけでなく、現場で使える手順書のたたき台を作りやすくなります。
まずは1つの作業を選び、10分で材料を埋めてみる。そこからAIに下書きを作らせ、人間が確認して育てる。小さく始めるなら、この順番が安全です。


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