道を聞かれるおじさん

「道を聞かれるおじさん」の内容を描いたイラスト Urban Lifestyle (都市の断片)

たまに道を聞かれる。

駅前で信号を待っているときとか、ちょっと立ち止まっているときとか。ほかにも人はいるのに、なぜか僕に聞いてくる。そんなにこの辺に詳しそうに見えるのかな。だいたい同じ道しか歩かないので、近所でも知らないところは結構ある。

先日も、駅を出たところで郵便局の場所を聞かれた。

それは知っている。何度か行ったことがある。知っている場所を聞かれると、ちょっと嬉しい。ああ、郵便局ですね、とすぐに答えた。ここまではよかった。

説明しようとすると、意外とうまく言えない。

あそこの信号を渡って、右に行って、しばらく歩いたところ。僕の頭の中ではちゃんと着いているのだけど、しばらくってどれくらいだ。途中に信号がもう一つあった気もする。右に行くのも、信号を渡る前と後で話が変わってくる。

目印になる店があればいいのだけど、こういうときに限って店の名前が出てこない。いつも前を通っている、青い看板の、何かを売っている店。そんな説明をされても困るよね。

相手が少し不安そうな顔になってきたので、途中まで一緒に行くことにした。

ちょうどそっちに行くので、と言った。

本当は逆だった。別に急いでいなかったし、ここまで説明しておいて、あとは頑張ってくださいとも言いにくい。あと、道を知っている人として話し始めたので、ちゃんと知っているところを見せたかったのもある。おじさんの見栄は面倒くさい。

歩き始めたら、道はすぐ分かった。次の角を曲がれば郵便局が見える。さっきはなぜあんなに曖昧になったのだろう。普段、何も考えずに歩いているからかな。

郵便局の看板が見えたところで、あそこです、と伝えた。お礼を言われて、ちょっといい気分になった。

ただ、その場で引き返すと、ちょうどそっちに行くという話がおかしくなる気がした。相手はそんなこと気にしないと思うけど、僕は気になった。

なので、そのまま少し歩いた。

一つ先の角まで行ってから曲がって、ぐるっと回って駅前に戻った。人に道を教えただけなのに、僕の帰り道がややこしくなっている。

帰る途中で、あの郵便局、土曜日は窓口が閉まっているんじゃないかと思った。その日は土曜日だった。

ATMを使いたかったのかもしれないし、ポストに手紙を入れるだけかもしれない。そこまでは聞いていない。場所はちゃんと教えたのだから、それでいいとは思う。

でも、窓口の前で困っていたら嫌だなぁ。

もう一回見に行くのも変なので、そのまま帰った。せっかくお礼を言ってもらったのに、家に着く頃には、余計なところまで案内したような気分になっていた。

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