傘を持って出るおじさん

「傘を持って出るおじさん」の内容を描いたイラスト Urban Lifestyle (都市の断片)

雨が降りそうな日に、長い傘を持って出るかどうかで少し悩む。

折りたたみ傘をカバンに入れておけばいいんだけど、僕は折りたたみ傘をたたむのが嫌いだ。買ったときはあんなにきれいに収まっていたのに、一回開くと袋に入らなくなる。入るんだろうけど、僕がやると入らない。袋だけ先に小さくなってない?と思うぐらい、毎回苦労する。

その点、長い傘はいい。閉じて、適当に巻いて、留めれば終わりだ。多少ぐちゃっとしていても、まあ傘だし、と思える。

ただ、降っていないときは非常に邪魔だ。

先日、午後から雨という予報を見て、長い傘を持って出かけた。玄関を出たときは晴れていたけど、帰りには降るらしい。こういう日にちゃんと傘を持っていけると、自分はわりと生活ができている人間だなと思う。傘一本でずいぶん評価が上がる。

駅まで歩くあいだ、傘を持っている人がほとんどいなかった。

みんな、午後から降るのを知らないのかな。

最初はそう思っていた。でも、電車に乗っても持っている人が少ない。だんだん、自分が見た予報は今日のものだったか気になってきた。確認したら今日だった。よかった。いや、雨なのでよくはないけど。

用事を済ませて外に出ると、曇っていた。そろそろかと思いながら歩いたけど、降らない。

途中で店に寄って、傘立てに傘を入れた。帰りに忘れかけて、一度戻った。この時点で、今日の傘は僕に何もしてくれていない。ずっと持ち歩いて、忘れないように気を使って、しかも取りに戻っている。

雨、ちょっとぐらい降ってもいいんじゃないか。

出かける前は降ってほしくなかったのに、もう自分が傘を持ってきたことを正解にしたくなっている。傘を持っていない人には申し訳ないけど、駅までの五分ぐらいでいい。僕が傘を開いて歩いて、駅に着いたらやんでくれたら、それでいい。

ずいぶん自分勝手な天気を希望しているなと思う。

結局、帰りの電車を降りても雨は降っていなかった。

ここまでくると、濡れずに帰れてよかったとは素直に思えない。傘を持ってきた僕だけが、荷物を一本増やして一日を過ごしたことになる。別に勝ち負けじゃないんだけど、手ぶらの人がちょっと羨ましい。

家まであと少しのところで、腕に何か当たった。

雨だ。

ようやく傘を開いた。まだ開かなくても歩けるぐらいだったけど、僕はもう持っているので。そこは遠慮しなくていい。

家に着くまで二分ぐらいだったと思う。玄関で傘を閉じて見ると、ほとんど濡れていなかった。それでも、ちゃんと使ったという感じはあった。

ただ、濡れた傘をそのまましまうのも気になる。乾かしてから片づけることにして、玄関に広げておいた。

夜、風呂上がりに通ろうとして、邪魔だなと思った。

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